地域農家と消費者をつなぐ - 沖縄「ハッピーモア市場」17年の歩み

地域農家と消費者をつなぐ - 沖縄「ハッピーモア市場」17年の歩み

地域農家と消費者をつなぐ 
沖縄「ハッピーモア市場」17年の歩み


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ハッピーモア市場について

「ハッピーモア市場」は、沖縄県宜野湾市にある農産物直売所で、現在は「ぎのわんゆいマルシェ」内の「ハッピーモア市場Tropical店」として営業しています。2008年に開業し、農家さん一人ひとりの想いを大切にし、その想いをお客様にお届けすることを使命としています。
登録農家は現在3,000以上で、地元の人たちだけでなく観光客からも人気のあるファーマーズマーケットとして、コロナ禍では売り上げが前年比140%増を記録しました。Instagram1.3万フォロワーを獲得する話題の農産物直売所としても知られています。


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インタビューについて

今回むっちゃんがこのハッピーモアさんの副社長さんにインタビューする貴重な機会をいただきました!!なっちゃんことドイツ在住のオーガニック専門家レムケなつこさんと一緒にお話を伺ってきました。
動画本編はこちら
店内の様子はこちら

ハッピーモア市場創業17年の歩み


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創業のきっかけ

ハッピーモア市場は2008年、宜野湾市志真志で事業をスタートしました。当時は沖縄南部地域を中心に、ビニールハウスを利用した農家の直売が盛んな時期でした。
ハッピーモア市場創業者ご自身は農業の知識がなく、農家経験もありませんでした。しかし、ご主人のお父様がトマト栽培をしており、JA指導のもとで農業を行っていました。高齢になったお父様がハウスを使い切れなくなり、処分を考えていた時、「せっかくあるものを有効活用しよう」という思いから事業が始まりました。

初期の課題と転換点

農薬使用からの脱却
最初はJA指導のもと、農薬を使用した栽培を行っていました。しかし、自分たちが食べる分には農薬を使わずに栽培していました。それならお客様の分も、「農薬を使わない方法にしよう」と考えるようになったとのことです。
収穫量は3分の1程度に減少しましたが、その分価格を上げて販売し、お客様に丁寧に説明することで理解を得ていきました。
大手農家との関係構築の困難
当初は大手農家との取引を目指しましたが、新しい小さな店舗は相手にされませんでした。そこで方向転換し、地域の小さな農家の方々、特に「おばあちゃん農家」と呼ばれる方々に声をかけました。

小さな農家の応援隊として

ユニークなビジネスモデル


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食べきれない分の野菜を持ち込んでもらう「小さな農家の応援隊」というコンセプトで運営を開始しました。相手は商売、趣味というより、趣味や生きがいとして農業をしている方々でした。
農家さんの特徴

そんな農家さん達に、まずは余った場合にハッピーモアにも分けてくださいというスタンスでお願いしていきました。病院やデイケアに持っていかれている農家さん達が、多く取れて「野菜が余った時には持ってくる」というスタイルでした。

品質へのこだわり

そんな農家さん達が作るストレスのない環境で育てられた野菜は、非常に丁寧で愛情深く作られていました。「余っているから」という優先順位はあっても、持ってきてくださる時には、虫の処理もきれいにして丁寧に持参してくださいました。

17年間の成長と現在の状況

農家ネットワークの拡大

インタビュー時点で約1,500件の農家さんとお取引をしており、地域も沖縄全島、離島まで広がっています。現在では登録農家数は3,000以上まで拡大し、さらなる成長を続けています。

店舗の発展


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2021年2月には2号店となる「ハッピーモア市場Tropical店」を「ぎのわんゆいマルシェ」内にオープンしました。現在は本店は閉店し、店舗機能をTropical店に統合。本店跡地は「ハッピーモア畑(ハル)パーク」として農業体験施設に生まれ変わりました。

ハッピーモアの目指すところ

ハッピーモアの方向性

・ハッピーモアの目標: 農家さんのものをしっかりお客様に届けたい

・結果: 農家さんの販路拡大に貢献

栽培指導システム現在30年オーガニックの野菜栽培に関わっている方が農業指導員として、契約農家さんの畑を巡回しています。


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指導内容:

・適切な肥料使用量の指導

・土壌改良のアドバイス\

・過剰な栄養投与の防止

日本では農業に関する規制が比較的緩く、化学肥料や農薬の使用について「やりすぎ」になってしまうケースが多いため、適切な指導が重要です。

経営の工夫とイノベーション

委託販売システム

農家さんからの野菜は基本的に委託販売で、手数料2割をいただき、8割を農家さんに還元しています。

沖縄の地域性への対応

沖縄は年間を通して台風が多く、夏は限られた野菜しか栽培できないため、安定供給が課題でした。そこで本土の農家さんとも取引を開始し、人参、玉ねぎ、じゃがいもなど食卓の基本となる野菜を安定供給できるようにしました。

初期5年間の試行錯誤

最初の5年間は沖縄の野菜に特化していましたが、ゴーヤーなどの薬草系野菜ばかりになってしまい、お客様が「買い物が怖い」「料理方法がわからない」という状況になってしまいました。

スムージー事業の開発


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料理離れへの対応

現代の料理離れや忙しさに対応するため、スムージー事業を開発しました。店の中央に設置したスムージーコーナーは、お客様の目を引く効果的な配置となっています。

目的と特徴

スムージーは「農家さんの野菜を盛り上げるため」のもので、単なるジュース屋ではありません。料理をしなくても野菜を摂取できる方法として提案しています。
スムージーの特徴:

・自家製酵素を使用
・野菜とフルーツに加えて栄養価の高い飲み物として提供

顧客参加型の開発

お客様のアイデアから生まれたスムージー事業は、現在では重要な目玉商品となっています。買い物をしながら気軽に利用でき、ポイント制度も導入しています。

顧客とのコミュニケーション


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ストーリーテリング

創業当初の比較的暇な時期に、農家さんの背景やストーリーをお客様に丁寧にお話ししていました。「このお母さんはこういう畑で、このおじいさんはこういうふうに育てている」といった具体的な情報を共有することで、お客様との絆を深めました。

顧客の成長

現在では、お客様が「誰々さんの何々はいつ入ってくるの?」と具体的な農家さんや商品を指定して尋ねてくるほど、深い関係性が築かれています。

ハッピーモアの使命と未来への展望

ハッピーモア市場の使命は、お客様の声を農家さんに、農家さんの声をお客様に届けることです。単なる商品の売買ではなく、人と人との絆を大切にし、沖縄の農業を支援し続けています。
大きな農家さんも含めて、農業全体をより良い方向に変えていきたいというビジョンを持ち、ゆっくりとした歩みでも着実に前進していくことを目指しています。

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まとめ

ハッピーモアの17年間の歩みを通じて、小さな農家の応援から始まったビジネスが、現在では1,500件の農家ネットワークを持つまでに成長しました。オーガニック栽培の推進、沖縄の農業支援、そして消費者と生産者をつなぐ架け橋として、これからも地域に根ざした活動を続けていってほしいです。副社長さん、お忙しい中、お時間をいただきまして、誠にありがとうございました!

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